工場に今後必要となる？レトロフィットIOTとは

このページでは、レトロフィットIOTの特徴や近年注目を集めている理由、メリット・デメリットなどをまとめています。

レトロフィットIOTとは

レトロフィットIoTとは、これまでのマシンの良い部分を残しながら最新の制御システムを搭載することで、機能の追加や制度の飛躍的な向上といった新型のマシンへと生まれ変わらせることを指します。ユーザーの中には、「いくら古くても、使い慣れた機械を使い続けたい」と考えている方もいるでしょう。そんな時に役立つのがレトロフィットIoTです。

通常のレトロフィットとレトロフィットIOTの違い

レトロフィットとは、古い工作機械の部品を新しい部品に替えることを指します。機能性の高い部品に入れ替えることも可能であり、性能向上なども期待できます。ただ、IOT機能などこれまでにない機能を追加することは基本的に行われません。

一方で、レトロフィットIOTは機械の部品を新しいものに変えるのではなく、IOT機能を搭載するためスマート工場を促進させることも可能です。そもそもIOTとは、モノをネットワークでつなぎ情報のやりとりを行う情報のやりとりをできるようにする仕組みのことです。このシステムを工作機器に導入すれば、データ収集・蓄積の自動化や業務の見える化などが目指せます。

レトロフィットIOTが注目される理由

レトロフィットIOTに注目が集まっている理由は、使い慣れた機械をそのままIOT化できるという点です。これまでも工作機械のIOT化を求める企業はありましたが、「長年使用しているマシンを手放すのに抵抗がある」「ネットワークにつなぐこと自体が難しい」などの理由から実現できないケースがほとんどでした。

しかし、レトロフィットIOTは既存のマシンに新しい機能を追加するため、ストレスを最小限に抑えたテクノロジー化が可能となります。

レトロフィットIOTによるメリットは？

生産管理を自動化できる

工作機械がIOT化すれば、生産管理のほとんどを自動化できます。製造業における生産管理は、データ収集や入力といった手作業がほとんどです。そのため、時間がかかってしまったりミスの発生などが課題となっている企業も多いでしょう。しかし、工作機械のIOT化によって、短時間かつ少ないミスでデータの自動収集が可能になります。

情報はスマホやタブレットからリアルタイムで確認できるので、時間や場所を問わないのも良いところです。

トラブルの早期解決につながる

IOT化すれば、工作機械のトラブルを瞬時に検知できます。異常を検知するとともに機械の稼働も自動的に停止できるだけでなく、他の機会を稼働させるシステムも搭載可能です。トラブルをすぐに確認できればその分素早い対応も可能となるため、設備の故障や生産ストップといったリスクの回避につながるでしょう。

技術やノウハウを「見える化」できる

工作機械の操作には長年のコツやスキルなど、言葉では表せないノウハウが関係します。感覚的なところに頼る他ないという点は、技術伝承を阻害するとして問題視されている部分です。そんな時にもIOTを導入すれば、技術者の動作を細かく解析できるため、ノウハウの「見える化」が叶います。

また、熟練技術者のノウハウをシステムに記憶させれば作業の自動化も期待できるので、少子高齢化による人材不足が解消されるでしょう。

レトロフィットIOTのデメリットについて

コストがかかる

工作機械のIOT化には、通信機器やセンサの設置費用、通信費などのコストが発生します。希望するシステムや工場の規模によっても異なりますが、大きなコストがかかるという点は覚えておきましょう。

イニシャルコストの他にランニングコストもかかるので、費用対効果を含めて導入を検討しなければなりません。自治体によっては導入補助金を用意しているケースもあるため、確認しておくと良いです。

運営に活用しきれない可能性がある

せっかく工作機械にIOTを導入しても、ICT人材が不足していると運用に活用しきれない可能性があります。事業ビジョンを達成するために収集・分析が必要なデータを洗い出すには、製造業にも詳しく情報通信技術にも精通した人材が欠かせません。

とはいえ、製造業と情報通信技術のどちらにも精通した人材の確保は難しく、社内で人材を育成するのにも時間がかかります。これらの業務負担を増やしたくない場合は、不足している部分にのみアウトソーシングを利用するのも良いかもしれません。

古い工作機械にIOTを導入する方法

工場で使用している信号灯を活用

工場で使われている設備には、稼働状況を表示する信号灯が設置されているケースがほとんどです。信号灯には3～4色のランプがついており、稼働状況によってランプの色が変わります。点灯状況の変更は光センサで行われているため、これを利用すれば設備をネットワークに接続する必要がありません。そのため、IOT非対応の古い機械でもネットワークにつなげやすくなります。

カメラでデジタル数字を読み取る

機械のコントロールに欠かせないデジタル数字を、アナログメーターや電光掲示板に反映する設備も存在します。これらの設備を導入している工場の場合、カメラを使ってデジタル数字を画像として読み取れば、データに変換できるでしょう。

動画サイトでライブ中継する

動画サイトを使って部品や設備の稼働状況をライブ中継すれば、情報の確認がスムーズになります。状況把握用のセンサを取り付けてデータを収集する方法なら、特別なセンサを使わずとも設備の状況を動画サイトにアップロードできるでしょう。

また、サービスカウンターの待ち状況を表示する電光掲示板をライブ中継した例も存在します。

工作機械のIOT化の流れ

データ分析

工作機械をIOT化するには、まずデータ分析から始めます。IoT化する目的を明確化してから、見える化する部分を検討しましょう。収集したデータの活用方法など、データ戦略も考えなければなりません。

データ収集には、担当者へのヒアリングやIoT機器の活用が効果的です。また、機器にセンサを設置してモニタリングを行うという方法もあります。

制御システムの構築

データ分析の結果から、どのようなシステム制御が必要かを考えていきます。機械の種類によって対応方法が異なるため、機械ごとに課題解決が期待できる制御システムを製造ラインに反映し、機械の制御を行いましょう。もちろん、はじめから理想通りの制御は難しいので、何度か調整しながら仕組みを構築するのがポイントです。

工作機械の自動化

データ分析と制御システムの構築が終わってはじめて、システムの自動化へと進められます。自動化可能な部分にロボットを採用すれば、業務効率の向上が期待できるでしょう。また、管理業務を自動化すれば、従業員の業務負担の軽減につながります。