工作機械選びで重要な剛性について

精密な加工をするためには工作機械の剛性は非常に重要なポイントです。剛性の意味や特徴などを紹介します。

工作機械における剛性とは

一般的には外力に対して変形しにくさのことを「剛性」と言います。工作機械においては、さらに機械の頑丈さ・加工精度の安定性なども含んだ意味で用いられるケースが多いでしょう。工作機械において剛性の高さは性能の良い機械の条件ともいえ、とくに重量物・大型のワークを行うのであれば剛性は欠かせない性能です。もし剛性が不十分であれば、機械に歪みが起こりやすく加工精度に影響を及ぼしかねません。

切削加工であればモノを削る力と同程度が抵抗力として帰ってくるため、十分な剛性がないと機械への負荷がかかりすぎるので注意しましょう。機械の破損・故障などのトラブルの要因になることも。

また剛性には重量・質量など止まった状況で加わる「静剛性」と、加速・減速や向きが変わるときに加わる「動剛性」があります。剛性は加工精度にも影響をきたす要素なので、切削条件・ワークの材質などの状況を見極めながら工作機械の剛性を検討しなければなりません。

剛性の高い工作機械のメリット

剛性の高い工作機械は色々な要素が影響しています。剛性が高いことによって、加工精度が安定しやすくなるなどのメリットがあるでしょう。

• 重量
  工作機械が重ければ重いほど安定性が高まりやすく、剛性も高まります。
• 重心
  重心の位置を低くすると安定性が高まるので、剛性もアップしやすくなるでしょう。
• 設計構造
  設計も剛性を決める重要なポイントです。土台に対して垂直に柱となるユニットを付けることで、安定性も高まりやすくなるでしょう。
• 各部品の精度や品質
  当然ながら工作機械には多くの部品が備わっているので、部品の精度・品質が良くなければ稼働時にズレ・がたつきなど剛性に影響が出てしまいます。

工作機械の剛性に関する注意点

剛性をとことん高めた工作機械を作りたいのであれば、重量を重くし、重心を低くすれば良いと思うかもしれません。しかし工作機械を使用するときの操作性が悪ければ、どんなに剛性が高くても良い機械とは言えないでしょう。重心を下げるためにはタブレット・主軸なども機械の下部に備える必要があり、大型ワーク・長さのある刃物などの加工がしにくくなってしまいます。そのため操作性も踏まえながら、剛性を高めた工作機械が理想的と言えるでしょう。

寄り切りが良い・悪いと言った表現も用いられますが、寄り切りとは刃物と主軸の距離・作業者から主軸までの距離のことです。寄り切りが良いとは根本まで接近でき、隅々まで掻こうがしやすいという意味になります。さらに作業者にとっても体に負担をかけずに作業が行えるなどのメリットも。剛性を高めるためにはベッド・コラムの取り付け角度は垂直が理想的ですが、角度を付けることで寄りつきもよくなります。だからこそ仕様などの状況を鑑みて、複合的な視点で設計しなければなりません。

その他加工の精度に影響を及ぼす要素について

実は加工の精度には剛性だけでなく、物体の温度も深く関わっています。温度が上がれば膨張するため長さを精密に測定するのであれば、徹底した温度管理が行える測定室で作業をしなければなりません。そのため熱による物体の変化にも細心の注意を払いましょう。また稼働時間が長くなれば、熱変形は起こりやすくなります。そのため稼働時間・温度などを把握することが精密に加工する上では重要なポイントです。